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2005.03.15

データの分析から考察,結論に至る過程の「飛躍」を回避するためには

 15日,夕方,院生の学会・研究会発表の予行演習を実施した。ある教師を1年間にわたって追跡し,その信念や同僚等のコミュニケーション等を記述・整理し,時系列的に,また比較文化的に考察し,そしてそれらをモデル化するというものだ。ていねいな記述には感心したし,また外国の研究事例をしっかりと参照し,考察に用いているのも好感がもてる。
 ただ,データの整理から考察,結論へと至るロジックに飛躍がある。これは,実証研究,とりわけ質的データを扱う研究が陥りがちな誤謬だ。要するに,自分が主張したいデータだけを都合よく取り出して考察に用いて,結論を出してしまうという問題だ。
 その問題は,結局は,研究デザインの未成熟さに還元される。あらかじめ研究をスタートさせる時に,データをどう整理するか,それをいかなる視点で考察するか,それを踏まえていかなる図表で結論を示すかが「見えていない」と,上記のような「飛躍」問題が生じる。
 私自身も,この点が甘かった。だから,院生の時に,先輩の田中博之さん(大阪教育大学助教授)に,研究デザインをよく点検してもらった。時には,仮想研究課題を設定し,それに基づいてリサーチプロポーザルを作成して,データの分析から考察,結論へと至る過程をシミュレートするなどして,トレーニングした。
結局,そういう訓練の積み重ねしか,「飛躍」を回避する術は身につかないのかもしれない。そうした意味で,わざわざ本番前に,追及されることを承知で発表練習に身を投じた院生の挑戦心は,きっといつか実りをもたらすに違いない(そう信じたい)。

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Comments

なるほどと,納得しました。仮想研究課題を設定してのシミュレート。木原先生は,そういったトレーニングを積み重ねられていたのですね。だからこそ,今があるのでしょうか。
研究デザインの未成熟さについては,自分の研究において,つくづく実感しましたので。やはり,地道な努力と積み重ね,自己研鑽が必要であることを改めて教えていただきました。院生の方の研究内容も知りたいなと思いました。

Posted by: ピルグラム | 2005.03.16 08:37 AM

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