« 「成長する学校」 | Main | 読書習慣の形成が成功すると(広島県府中市立南小学校の実践研究) »

2005.11.24

研究授業後の協議会を充実させるために

 昨日,新大阪で,『学力向上ハンドブック』(Benesse教育研究開発センターとの共同研究)の編集会議が催され,私も,それに参加した。このハンドブックは,学力調査に基づいて,授業改善のアクションプランを作成し,また実践し,そして評価するというR-PDCAのプロセスを読者に案内するものだ。
 私の執筆担当は,第7章の「学力向上を確かなものとするためのアクションプランの設計と実行」で,3つのトピック(授業改善,校内研修・研究,家庭・地域とのパートナーシップ)を扱う。それぞれのトピックについて,概要説明,ケーススタディと解説,演習,コラム,そして,まとめと自己評価という枠組みで構成している。
 「校内研修・研究」のうち,授業研究会における協議について,①協議会の趣旨の徹底,②協議会のワークショップ的展開,③参加者自身の授業改善を促す作業(活動),④講師(指導主事,大学教授)の有効利用というポイントを示すことにしていた。編集会議のメンバーより,⑤として,協議会における「論点の選定や焦点化」を詳しく解説してほしいとの依頼を受け,次のような文章を追記した。校内研修・研究の授業研究会で司会進行役を果たす方にとって参考になるだろうか。

⑤論点の選定や焦点化
 学力向上に関わる授業づくりの視点は多様なので,ある授業を題材とする協議会では,当然,様々な意見が登場するでしょう。また,それは,教師たちのそれぞれが自らの授業の改善を検討する可能性を高めてくれるわけですから,一般的には望ましいことです。
 ただし,ある程度,校内研修・研究が重ねられ,学力向上への取り組みが成熟してくると,校内研修・研究のテーマもシャープなものになるでしょうし,研究授業自体が「提案性」のあるものになってくるに違いありません。
 本ケーススタディで取り上げた事例は,まさにそうした段階にある学校の授業研究です。総合的な学習のカリキュラム開発の継続・発展,それを踏まえた算数の指導・評価の工夫改善の歴史がこの学校にはありますから,それを踏まえて,協議会における議論も,次第に焦点化されるでしょう。それには,いくつかの方針があります。
 まず,授業者が研究授業に込めた思い,授業の提案性に即して議論するとよいでしょう。このケースの場合は,指導案の「研究主題との関連について」に記されていますが,授業において「『書く』活動を通して,目的や意図に応じ,自分の思いや考えを効果的に表現しようと」していたか,また,それが,4つの支援の方策(題材の工夫,自己及び相互評価の重視など)によって促されていたかについて,集中的に議論すべきでしょう。さらに,それらの方策が他学年の国語科の授業にも適用可能か,その場合にはどのような翻訳が必要なのかなどについても検討できれば,学校カリキュラムの評価にまでも議論が及ぶでしょう。
 さらに,学力向上の様々な取り組みの中でも,多くの学校が問題視している,いわば「共通課題」に議論を展開してもよいでしょう。例えば,評価規準と判断基準の作成,その子どもへの提示については,いまだに多くの学校で試行錯誤が続いています。また,形成的評価の結果に応じた授業の複線化,判断基準が「努力を要する」レベルにある子どもへの配慮,「十分満足できる」レベルに達した子どもへの深化・発展教材の提供,それらに資すると思われるIT活用の推進などの問題は,未解決です。加えて,学力向上のホットなトピックには,小中一貫教育などがありますから,そうした点についても議論できれば,なおいっそう充実した協議会になるでしょう。
 もちろん,1度の協議会で,集中的に議論できる話題は限られます。したがって,研究授業に対するたくさんの意見の中から,集中的に議論できるものに何を定めるかを,司会進行役は決めなければなりません。指導案を読んだり,授業者等と打ち合わせをしたりして,それを予想しておくことも大切ですし,協議会も授業と同様に「生きもの」ですから,その場で参加者の様子を伺いながら,トピックの選定を柔軟に変更していくことも司会進行役は試みるべきでしょう。そうした意味では,協議会は,司会進行役の教師が,研究授業を教材とし,同僚を児童・生徒とみなして展開する,「第2の研究授業」なのです。

|

« 「成長する学校」 | Main | 読書習慣の形成が成功すると(広島県府中市立南小学校の実践研究) »

Comments

全部読みました。とっても納得☆協議会での発言の動向に注目し、全体で何をとりあげればいいのか、判断が一番難しいところです。予定していた協議の柱と全くずれてしまうこともあります。まさに「論点の選定」「焦点化」は司会の力量ですね。

Posted by: ほそみ | 2005.11.24 at 09:12 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 「成長する学校」 | Main | 読書習慣の形成が成功すると(広島県府中市立南小学校の実践研究) »