2006.06.30
2006.06.29
教師の実践研究の継続・発展(大阪教育大学の大学院・実践学校教育講座の講義)
本日も,大阪教育大学の大学院・実践学校教育専攻の「教師発達学」の講義を担当した。本日は,教師の実践研究たる,アクションリサーチの特徴,その事例について,解説したり,問題提起したりした。一般にアクションリサーチには,問題解決的,事例開発的という性格を帯びる。さらに教師たちが着手するものには,自分自身に採っての必然性,そしてそれゆえに生まれる,継続・発展性が大切だ。それらを解説した後,いくつかの事例について紹介し,教師の実践研究の可能性を受講生に検討してもらった。
例えば,放送教育の実践研究に長年たずさわってきた小学校教師が伝統的な放送教育実践たるラジオの聴取と並行してデジタル教材を活用している姿,地図を核にして社会科教育の実践を継続してきた教師がGISや異教科ティーム・ティーチングに挑戦する姿を受講生に示した。
さらに,音楽教育実践に熱心に取り組んできた教師が,学校研究の領域が道徳になったことで自己実現しにくくなったが,過去と現在・未来の実践を接続させようともがく姿を提示し,その術を私と受講生で共同的に考案してみた。 最後に,特に,これから教職に就く受講生に,「そう簡単には,一生を捧げられるアクションリサーチトピックにはめぐり逢えないけれども,それを追究しようとする姿勢が大切です」と締めくくった。
2006.06.28
思考力の育成に向けて(広島県府中市立南小学校の実践研究)
27日,広島県府中市立南小学校の校内研究会に参加した。同校は,昨年度は「確かな学力の育成-コミュニケーション能力の育成を通して-」という研修主題を掲げ,国語部会と算数部会を設けて,実践研究に取り組んでいた。今年度は,それを踏まえて,「論理的思考力」の育成に挑戦するという。私は,思考力の育成は,情報活用が豊かでないと成立しないと考えているので,同校の「コミュニケーション能力を思考力に結実させる」という研究の展開は望ましいものだと思う。 昨日は,1年生の国語,2年生の算数の授業を拝見した。例えば,2年生の教室の黒板には,「比べて言う」「前に勉強したことを思い出して言う」といった「数学的」コミュニケーションの原理が記されていた。子どもたちの思考力の発揮,共鳴に資するに違いない。
同校の取り組みは,11月14日(火)の午後,研究発表会にて披露される。
2006.06.27
『教師が磨き合う学校研究』(ぎょうせい)へのコメント
拙著『教師が磨き合う学校研究』(ぎょうせい)の刊行から,ほぼ1ヶ月が経った。献本した方から,読後の感想等のコメントが寄せられた。
人によって,評価してくださる部分が異なる。それが,おもしろい。何人かの研究者は,体系性が見事だとおっしゃってくださった。別の研究者たちは,第2部の内容(学校研究の歳時記,つまり学校の実践研究の1年の手続きモデル)がユニークであると,リアクションしてくださった。何名かの研究者や教師たちが,分かりやすい,読みやすい,事例が魅力的だと,語ってくださった。
私自身は,拙著では,「学校研究」を理論・モデル・事例を重ねて体系的に論ずることを目指した。ただ執筆してみて,一番提案性があるかなと思ったのは,実は,第1部の「2 学校研究の歴史」部分なのである。過去あるいは現在の学校の実践研究を詳細に検討した学術研究は少なくない。特に過去の場合は教育方法学的見地から,また現在のものについては学校経営学的視点から,かなりの研究知見が蓄積されているように思う。けれども,それらを積極的に連結させて,「学校研究」の変遷,不易と流行を指摘した論文は数少ないと思うからだ。
もし,このブログの読者の中に拙著をご購入なさった方がいらっしゃったら,読後感をお寄せいただければ幸甚である。
2006.06.26
放送教育研究会全国大会での提案者が募集されている!
全国放送教育研究会連盟は,年に1度,全国大会を開催している。今年度の第57回大会は,10月13・14日に北海道・札幌を会場にして,授業や保育の公開,番組別研究交流会,総合全体会といったプログラムで企画・運営される。
特筆すべきは,番組別研究交流会での提案(実践報告)者の公募だ。IT活用と放送教育,キャリア教育とメディア・リテラシーといったテーマに合致した実践をレポートできる人はぜひ,応募してみるといい。詳しくは,こちらから。
2006.06.25
学校放送番組の内容・構成を活かして,理科のどのような学力の向上を目指すのか
本日,全放連の研究活動,「放送学習による学力向上プロジェクト」のミーティングに出席した。日曜日の10時からの研究会に,10名以上の教師が集った。このグループの研究熱に敬意を表したい。
この日の話し合いは,7月19日(水,2学期制のため26日が終業式)に,川崎市立夢見ヶ崎小学校4年生の草柳さんが,『ふしぎ大調査』の第7回「宝のありかは星に聞け」を活用して展開する,研究授業の目標や内容,過程に関するものだ。
番組の内容・構成を活かして,理科のどのような学力の向上を目指すのかについて,多様な意見が出た。「理科ではやはり観察・実験が大切だから,その技能を高めるためのモデルを番組で提供すべきだ」という正統派の意見もあれば,「夏休み前の時期だから,自然を見つめる活動の多様性,それらへの興味・関心を高めるのがベター,だから番組視聴後に自由研究の課題づくりをするといいし,それには,星座物語を読むといった活動が含まれてもよいのではないか」といった意見も登場した。 この天体の学習では「ロマン」を軽視してはいけないだろう。それが放送番組活用の意義であるということを共通理解した後,単元計画や本時の目標・過程等について,さらに議論を重ねた。
草柳さんが,今日の議論を踏まえて,どんな挑戦をしてくれるか,楽しみにしたいと思う。放送教育指導者養成講座(通称:虎の穴)の卒業生たちは,ぜひ,盛夏に研究授業にチャレンジする,彼に応援のエールを。
2006.06.24
英語活動を充実させる教材
昨日もレポートしたように,大阪府南河内郡千早赤阪村のこごせ幼稚園と4つの小学校(千早,赤阪,小吹台,多聞),そして千早中学校が,文部科学省指定研究開発学校として取り組んでいる,英語科や情報科のカリキュラム開発の中間成果を公開してくれた。
公開された英語活動の授業では,それを充実させるための工夫,とりわけ教材開発がすぐれていたように思う。 例えば,写真は,小学校2年生の子どもに形や色の表現を定着させるために準備されたゲームだ。イラストを完成させるために,パーツを教師に要求しなければならない。イラスト自体も楽しくて低学年の子どもが取り組みやすいし,彼らは,教師が意図的に省いたパーツを埋めようとして,ごく自然に表現を練習することになる。
英語活動は,「誰が」指導するかという問題がよく話題になるが,それと同じくらい,いやそれ以上に「教材」開発の工夫が大切であるとあらためて感じた。
2006.06.23
コミュニケーション能力が育まれている証
本日,大阪府南河内郡千早赤阪村のこごせ幼稚園と4つの小学校(千早,赤阪,小吹台,多聞),そして千早中学校が,文部科学省指定研究開発学校として取り組んでいる,英語科や情報科のカリキュラム開発の中間成果を公開してくれた。私も,パネルディスカッションのコーディネータを果たすために,参加した。
6校園の共同研究のテーマは,「コミュニケーション能力を育てる」であるが,教師たちは,着実にそれに迫っていると思う。実践の成果は,英語によるコミュニケーションへの積極的態度,その方略の多様性,情報機器操作の巧みさ,情報活用の繊細さなどに示される他,写真のような子どもたちに意識に象徴されている。 これは,小吹台小学校の教室を借りて学習を進めた多聞小学校の児童が感謝の気持ちを黒板に残したものだ。彼らは,当該クラスの児童と親しい間柄にあるわけではない。また,本当ならば自分たちがいつも生活・学習しているスペースで活動したかったに違いない。換言すれば,小吹台小学校に行かねばならないのは,必ずしも嬉しいことではなかったであろう。それでも,場所を提供してくれた,見えざる仲間に感謝の気持ちを示すという行為は,人と人とのよい関係を築くという,コミュニケーションの本質に迫るものであり,彼らにコミュニケーション能力が育まれている証である。
2006.06.22
「学校評価」委員会の開催
本日,本年度「大阪市学校評価事業」協力校の1つを訪れた。2時間の授業を見学し,その後,学校評議員のメンバーたちと学校評価委員会の第1回を催した。
学校から,教職員,生徒,保護者を対象とするアンケート調査の結果について説明を受け,それを題材として,学校の課題などを議論した。さすがに昨年度から学校評議員を務めている方々だけに,学校の長短所をするどく突くコメントが続いた。私は,学校評価を「学校の成長」につなげるための方法論について解説した。他のメンバーも賛同してくださった。
2006.06.21
あなたの学校では1人の教師が1年間に何度研究授業に挑戦するだろうか
あなたの学校では,1人の教師が1年に何度研究授業に挑戦だろうか。昨日レポートした,広島県府中市の上下北小学校では,11月21日の研究発表会の公開授業も含めて,1人が年間に複数回研究授業を試みる。
昨日見学した,第2学年の教師は,4月(道徳),5月(国語),6月(国語)と,3月連続で,私に授業を見せてくれた。4月と6月は,彼女が自主的にやっているので,必ずしも全員の教師が授業を見学できるわけではないし,事後の協議会の出席者も多くはない。けれども,彼女は,きちんと指導案を作成して,自分なりにチャレンジする部分を示してくれた。 例えば,昨日の場合は,デジタルコンテンツを購入できたので,それを活かした授業を展開してみたいと自ら申し出たのである。そうした授業研究熱が子どもたちの学習意欲,思考力や表現力の向上に結実していることは言うまでもない。
彼女は,本年度,さらに複数回,研究授業を試みる予定であると聞いている。1年間に1度も研究授業に取り組まない教師も少なくないことを考えれば,彼女のチャレンジ精神には頭が下がる思いだ。
同時に,彼女の挑戦を認め,促している,上下北小学校の教師文化にも敬意を表したい。もし同校に「横並び主義」がはびこっていたら,「1人だけ何度も研究授業を実施するのは,よくない」と彼女の挑戦を非難する声が同僚から出てくるだろう。しかし,上下北小学校では,決してそうはならない。それぞれの教師が,授業研究マインドを持ち,自分にできる精一杯の授業改善に着手しているという自負があるからだ。
2006.06.20
小中学校の教師たちの合同授業研究会
またまた広島県府中市の上下町を訪れた。本日は,午前中に,上下北小学校の2年生国語の授業が,そして午後には,上下中学校の3年生英語の研究授業が実施された。
特に,後者は,上下南小学校や上下北小学校から,たくさんの教師がやってきて,それ見学し,また,この授業を題材とする協議会に参加した。小中学校の教師たちによる合同授業研究会では,英語活動と英語科のカリキュラム・授業の異同,評価規準の運用,小中学校教師の協力教授などについて,熱心な議論が繰り広げられた。3校は,上下中学校区小中一貫教育の研究主題「主体的に学び,自ら考え,表現できる子どもの育成をめざして」の下,精力的に合同の授業研究会を重ねている。それは,3校の連携の厚み,幅広さに結実しつつあるように思う。
3校合同研究発表会が,11月21日(火)に開催される。朝から,まず南小学校で,次いで,北小学校で,そして午後から中学校で,それぞれ研究授業が実施される。午後には,分科会(教科,道徳,進路の予定),そして全体会も設定されている。小中学校の連携に関する研究会としては,工夫に富んだプログラムになると思う。このテーマに関心のある方は,ぜひ参加を予定していただきたい。
2006.06.19
「学校評価」に関する事業の本格スタート
本日,「大阪市学校評価事業運営連絡会」が催され,私も顧問として出席した。この事業は,文部科学省が示した『義務教育諸学校における学校評価ガイドライン』の実行や普及に資する研究プロジェクトである(2年間)。全国各地で同様の事業が展開される。
大阪市教育委員会が事務局となり,市内の6小学校と4中学校の協力を得て,学校評価のモデルケース開発に取り組む。
連絡会の最後に,私は,顧問として,「学校評価」の今日的意義を再確認すべく,次のようなコメント等を残した。
1)評価は,次年度以降の授業改善や学校改革のプランの策定を含まねばならないし,それこそが大切である。
2)学校評価の主柱は,教職員の学校教育活動に対する自己評価である。
3)外部評価は,自己評価を補完したり強化したりするものであり,外部評価者には,単なる思いではなく,実行可能な方針や方策を示してもらう必要がある。
4)改善・改革のプランは,単年度のものと複数年度に及ぶものを構想すべきである。後者については,学校長が替わっても踏襲すべきものである。ただし,プランは常に更新され,再構成されるものであるから,「部分的」な変更はむしろ歓迎すべきものである。
5)英国の学校組織に習い,学校に「学校評価主任」ともよべる,実務的リーダーを設置するのもよろしかろう。
6)評価の項目・指標だけでなく,水準も開発したい。例えば,評価項目の1つに授業研究があるが,それを何度,またいかなるスタイルで実施すれば,「おおむね満足できる」と言えるかを暫定的にでも明らかにしたい。
7)学校評価の手順は,いわゆるR-PDCAサイクルをたどることになるが,その手順は,演習的な活動への従事によって会得できる。学校評価のためのワークショップ的研修を,少なくとも,評価計画の策定,次年度等のプラン作成時には実施したい。
2006.06.18
何歳まで学校現場に出かけられるか
先ほど,NHK総合の番組「ダーウィンが来た!」で,パプアニューギニアの不思議な魚,囚人魚の生態が紹介されていた。そして,その魚の存在を発見した,高齢の生物学者が現場主義を貫き,83歳の高齢でも海に潜って研究を続けている様子を目にした。
すごいことだ。私たち授業研究を専門とする学者も,学校現場での臨床的活動を大切にしているが,果たして,何歳まで学校現場に出かけ,クリエイティブな仕事ができるであろうか。自分の来し方をふり返ると,自信がなくなる。既に,20代から30代前半のようには,密に,またていねいに学校現場に交われなくなりつつあるからだ。
研究のアプローチは,もちろんフィールドワークだけではないけれども,それを得意技(?)にしている私たちにとって,学校現場との共同的関係を維持できるかどうか,それを何歳まで続けられるかは深刻な問題だ。もちろん,出かけるだけなら,それなりに健康であればできるであろうが,実践家と研究者の両者にとって実りある関係を築かねばならないとすれば,年齢的限界があることを認めざるをえない(限界には個人差があることも分かってはいるが――)。
2006.06.17
日本教育工学会の6月シンポジウム(「2007年以降の教員の大量退職に伴う教育現場の諸問題 ~若手教員の授業力向上戦略を探る~」)
私が属している日本教育工学会では,毎年,6月に総会と合わせて,シンポジウムを開催している。午前,午後の2部制だ。
午前の部シンポジウム1のテーマは「ICTの教育利用と学力向上」,午後の部シンポジウム2のテーマは「2007年以降の教員の大量退職に伴う教育現場の諸問題 ~若手教員の授業力向上戦略を探る~」である。
今回,私は,シンポジウム2に登壇者になった。司会は山西潤一先生(富山大学),他の登壇者は,西原幹男(東京都教育庁人事部選考課長),釜田聡先生(上越教育大学),澤本和子先生(日本女子大学)である。私は,問題は,若手教員の授業力向上そのものではなく,それを促す,中堅・ベテラン教員の「若手教員との関係構築力」が重要であること,換言すれば,問題視すべきは,中堅・ベテラン教員の若手教員に対するアドバイスやメンタリングの質であり,さらに彼ら自身が授業力を高めようとする姿を示しているか否かであり,それらをいかに組織化するかというマネージメントであることを主張した。
2時間のシンポジウムに4人が登壇したわけだが,やはり時間不足で,各主張をからめるのが難しい――。なんとなく消化不良に終わったような――。
2006.06.16
デジタルコンテンツの利用に関する比較研究
私が指導している大学院生が,デジタルコンテンツの利用に関する比較研究を構想している。デジタルコンテンツをよく利用する教師が,どのような学力の育成を目指して,いかなる場面で,それを用いているかを,実際にいくつかのコンテンツを見てもらいながら,回答してもらうものだ。コンテンツ利用に関する,教師の実践的知識を抽出することが目的である。
私がかつて,日本賞候補となった学校放送番組を調査刺激に用いて,若手教師とベテラン教師に,番組分析や番組を用いた授業の設計を依頼し,その異同を確認した研究をひな形としている(この研究は『授業研究と教師の成長』<日本文教出版>に収録されている)。あの研究を発展させるべく,院生には,デジタルコンテンツ利用に関する教師の英知をしっかりと探ってもらいたい。
何人かの読者には,調査へのご協力を依頼するかもしれない。その際には,どうぞよろしくお願いいたします。
2006.06.15
『教師が磨き合う学校研究』と『できる教師のデジタル仕事術』
本日,Amazonで,図書を検索した。ついでに,拙著『教師が磨き合う学校研究』の売れ行きも探ってみた。「あわせて買いたい」で,『教師が磨き合う学校研究』と『できる教師のデジタル仕事術』がセットになっていて,びっくりした。
おそらくは,『できる教師のデジタル仕事術』を購入した,堀田さん@NIMEの研究プロジェクトに参画している教師たち等が,堀田さんがこの著書を紹介してくれたのを見て,購入してくれたのであろう。ありがたい話だ。
2006.06.14
「伝え合う力」の育成と放送番組の活用
14日,NHK大阪で,第40回なにわ放送教育研究会が催された。今回は,奈良の金原さんが,研究授業のプランを紹介してくれた。それは,『わかる国語 読み書きのツボ 5・6年』を活用した「描写力」育成の試みである。
金原さんの学校は,「言語的理解力・表現力を育成する指導法の工夫~子どもたちの伝え合う力を高めるために~」を研究主題に据えている。彼は,指導法の工夫の一環として,この番組の活用を主柱とする「国語力」向上計画の策定,そのための特設単元群の開発に着手している。しかも,同学年の3つのクラスの担任も巻き込んで(すごい!)。「伝え合う力」・読解力・国語力などの概念の整理,個に応じた指導と番組活用の接点の開拓などについて議論した。
2006.06.13
「道徳的」思考力や「道徳的」コミュニケーション
本日,広島県府中市立上下南小学校を訪問し,4年生道徳と6年生英語活動の授業を見学した。そして,それらに関する研究協議会に参加した。上下南小学校は,上下中学校区小中一貫教育の研究主題「主体的に学び,自ら考え,表現できる子どもの育成をめざして」を受けて,「読み解く力を高め,考えを伝え合う児童の育成~論理的に思考し,表現できる児童に~」という学校の研究主題を設定し,道徳,算数,社会,理科,総合(英語活動)の授業改善に,教師たちが取り組んでいる。
本日は,道徳の授業づくり,とりわけ,その目標と評価規準について,かなり議論した。 研究授業の主題は,「勇気ある心 1-(4)正義・勇気」であるから,この価値を吟味させる,磨かせるという目標が設定されてしかるべきであろう。しかし,それ以上に,上下南小学校の研究主題からすれば,道徳的思考力,道徳的コミュニケーション能力とも呼べるような能力の育成が尊重されるべきであるとも思った。例えば,テキストを葛藤と視点として読解するとか,自らの価値判断の「根拠」を重視して発表するといった理法と技法を子どもたちに獲得させることが,同校の研究主題からすれば,より期待される取り組みであろう。
2006.06.12
研究推進だよりで何を伝えるか(LTプロジェクトのテレビ会議から)
松下教育研究財団の支援を受けて企画・運営している,学校研究推進リーダー養成プロジェクト(LTプロジェクト)の2年度目の活動が進んでいる。これは,研究主任として,学校の実践研究を充実させるための力量を獲得してもらうためのプロジェクトだ。
昨夜19:30~21:50,このプロジェクトのテレビ会議を実施した。 5名のメンバーに学校研究への関わりを簡単に報告してもらった後,2名のメンバーには,学校研究を発展させるために採用しているアクションとその反省を詳細にレポートしてもらい,それを題材にして,1学期の学校研究の企画・運営について議論した。例えば,学校長や教務主任との研究に関するコミュニケーション,外部講師への依頼内容・方法,年度末の研究成果に関する見通しなどについてである。
トピックに1つとして,「研究推進だより」の作成・配布がとりあげられた。このブログの読者には,学校研究のリーダー的存在の方も多いと思うが,どれくらいの頻度で,何のための「研究推進だより」を発行なさっているであろうか。
メンバーには,本年度になって8号も作成・配布している教師もいれば,まったく発行していない教師もいた。その意図として,研究のコンセプトの啓発,共通して取り組んでもらいたい活動の確認,授業研究等の記録などの点がメンバーから呈された。加えて,経験豊かなファシリテーターから,「研究主任しか知りえないような,個々の教師のがんばりを他の同僚に伝えることができる」という可能性が示唆された。私も,それを受けて,「学級通信の意義とよく似ていますよね,子どもたちの知られざる努力を学級全体に広げるために,通信を書くこともあるじゃないですか」と,それを強調した。
2006.06.11
2006.06.10
教育学教室の研修旅行(京都へ)
10日,私が所属している,大阪市立大学・文学部・人間行動学科の教育学コースでは,教員,大学院生,学部生が一同に介して,研修旅行に出かけた。今年の訪問場所は京都だ。本日は,祇園近くにある八坂神社等を訪問した。旅行の分掌を担当しているので,いろいろ心配することもあるのだが,今のところ,順調だ。
研究紀要の作成(LTプロジェクトの学校研究推進に関するQ&A)
学校研究の成果を,年度末,あるいは研究発表会の開催にあわせて,研究紀要にまとめる学校は少なくない(でも,教師の中には,「研究紀要」という言葉を聞いたことがないという人もいるようだ――)。
研究紀要の作成に向けての作業は,いつ始めればよいのだろうか。例えば年度末に完成させるとしたら,1月くらいからだろうか,それとも冬休みの原稿執筆を可能にするために12月くらいだろうか――。私は,ある意味では,4月に研究を始めると同時に,研究紀要の執筆がスタートすると考えている。それは,研究紀要の文章等には,4月からの研究活動の「記録」を載せる必要があるからだ。何を載せるかについてある程度イメージがないと,何を記録すればよいのか分からない。だから,研究紀要の作成を頭に浮かべながら,例えば研究授業の様子を,例えば協議会の討議内容を記録することになろう。
私たちは,学校研究推進リーダー養成プロジェクト(LTプロジェクト)で,学校研究の企画・運営に関わるQ&A集を作成し,Web上で公開している。既に多くの方にアクセしてもらっているが,時期尚早と考える人が多いせいか,「4-(1) 研究紀要作成のための準備」の部分へのアクセスがやや少ない。けれども,上述したような見地からすれば,もし研究主任が「研究紀要の作成作業は年度末や研究発表会が近づいてから――」と思っているのであれば,それは少々認識が甘いと言わざるを得ない。
2006.06.09
授業研究の企画・運営(LTプロジェクトの学校研究推進に関するQ&A)
6月には,小中学校で,いわゆる研究授業が催されることが多い。その企画・運営に,頭を悩ませている研究主任や研修担当はいないだろうか。研究授業をいやがる同僚にどのようにして快く引き受けてもらうか,沈黙の時間が長い協議会をいかにして盛り上げるか,悩みは尽きないはずだ――。私たちは,学校研究推進リーダー養成プロジェクト(LTプロジェクト)で,学校研究の企画・運営に関わるQ&A集を作成し,Web上で公開している。既に多くの方にアクセしてもらっている。
このQ&A集の「授業研究の企画・運営」部分では,授業研究会の準備,外部講師の招聘・活用,事前検討会の実施,研究授業の参観,研究授業後の協議会の司会・進行,その他の6カテゴリーの20項目を用意してみた。このQ&A集を読み,またチェックリストとして用いて,所属校の授業研究を活性化してもらいたい。
2006.06.08
「選択」による全員参加の授業(NHK教育テレビ『わくわく授業』から)
先日,NHK教育テレビ『わくわく授業-わたしの教え方-』「恋心を三十一文字に~桔梗亜紀先生の国語~」という番組を見た。『わくわく授業』は全国の授業の達人(?)を紹介するものであるが,今回紹介された授業づくりには,特に感心させられた。
島根県松江市の中学校2年生の国語の授業で,短歌を題材とするものだった。恋歌たる相聞歌を中学生に鑑賞させたり,表現させたりするものだ。まず,番組でも強調していたが,卒業(先輩への想い)とか,バレンタインデー等が続く時期に,この題材を導入するという,「旬」を逃さぬ,教師の姿勢がいい。また,子どもたちの作品をていねいに読み,彼らに個別的にかかわろうとする授業者の様子は,いわゆる「きめ細かな指導」の理想モデルを提示していた。子どもの作品の工夫を発見し,それを「すばらしー」「それがいいよ」と讃える姿にも,共感させられた。
さらに私が最も注目したのは,「選択」という原理が,この「相聞歌」の授業デザインに導入され,その成立を支えていたことである。例えば,上の句と下の句を「選択」して対応づける,友だちの作品の中から最も共感できるものを「選択」して返歌を作成する,8つの短歌を(「選択」によって)3つに分類する等々,どの子どもも「選択」を通じてなんらかのアクションを起こせる=授業に参加できるように,学習活動が構成されていた。いわば,仮説実験授業の国語版を見ているようだった(題材となった短歌が文学鑑賞の見地からすぐれた点を有しているという教材の学術性も含めて)。
2006.06.07
研究主任が学校の実践史をどこまで把握しているか
昨日も紹介したが,鳥取県教育センターの新任研究主任を対象とする教員研修会に協力してきた。講義の中にいくつかの演習的活動を導入したが,そのうちの1つは,次のようなものであった。
「所属校の2000年度,2003年度,そして本年度(2006年度)の研究の内容を簡単に紹介してください。また,それらがどのように連続・発展しているかについて,分かりやすく説明してください。」 2000年度の研究については分からないという教師が少なくなかった。教員の異動のサイクル区からすると,おそらくは,その人たちは,現在所属している学校にまだ赴任していなかったのであろう。でも,研究主任として活躍する教師には,ぜひ,学校研究の歴史に長けていてもらいたいと思う。
2000年度は,現在の教育課程への移行措置が始まった年度であり,「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発が熱を帯びてきた時期だ。そして,2003年度は,「学びのすすめ」による学力向上ブームが台頭し始める時期だ。現在,つまり2006年度は,その延長線上にあると解釈するのが通例であろう。それを前提として,この演習問題は,2003年度の前後で研究を連続・発展させているか,換言すれば「総合的な学習」と「(教科における)確かな学力の育成」を結びつけて指導と評価を展開できているかを問うていることになる。
経験則であるが,両者の結びつきに筋が通っている学校の取り組みは,学力向上へのアプローチが豊かだ。決して,ドリルや読書タイムに限定されていない。「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発の経験が,教師たちの授業観の再構築を促してくれたからであろう。
2006.06.06
研究主任を対象とする研修会
鳥取県教育センターで,新任研究主任を対象とする教員研修会が催され,そこで2時間20分もの講義を担当してきた。午前中に,参加者は,学校の実践研究に関する意見交換を繰り広げている。そこで,まず,その内容を総括してもらい,所属校の実践研究に関する現状分析を実施してもらった。次いで,「学校研究の意義」「学校研究推進の要件」「異校園種の共同研究」について,話題提供し,また演習的活動を導入した。「学校研究推進の要件」は,多様なものが考えられるが,時間の関係上,次の5つに絞った。そして,その内容を,事例を加えながら解説した。
・学校の実践史,置かれた条件の尊重(そのためにも他校,他地域に学ぶ)
・研究テーマ・内容の(ある程度)のバランス,全体性,多様性
・全員参加,そのための参加型授業研究
・学力調査,児童・生徒による授業評価,保護者や地域住民等へのアンケートなどで成果を確認
・ミドルリーダーの役割の充実
学校研究とその企画・運営をリードする研究主任の役割は最近特に力を注いでいる分野なので,伝えたいことも多く,私にとっては,あっと言う間に2時間20分が過ぎた。時間が足らないくらいだった。講義の最後に,ある参加者に感想を聞いてみたが,「疲れたけど,実りのある研修になりました」と言ってくださった。なんとか役割を果たせたのではないかと思う。
2006.06.05
やっぱり「山の分校の記録」?
本年度,我が大阪市立大学の文学部専門科目で,『教育メディア論』を担当している。この講義では,放送教育の理論と実践を体系的に解説する。
今日で講義は第7回目である。ここまで,テレビ学校放送番組のスタート,昭和40年代の学校放送番組の最盛期,メディアミックスの取り組み,番組とマルチメディア・インターネットの複合利用と放送教育の歴史をここまでたどってきた。
本日から,今日の放送教育の枠組み(番組編成)と実践(デジタル教材の配信と活用)を解説するが,その前に,ここまでの講義の内容で印象に残っていることを受講生にたずねてみた。80名近くの受講生の7割近くが,テレビ学校放送黎明期の実践記録として紹介した「山の分校の記録」が最も印象に残っていると回答する。テレビが,あんなにも,子どもたちの意欲,創造性を高め,地域開発の意識を強めることに驚いたからだと,彼らはその理由を語る。
実践のすごさが学生に強烈なインパクトを与えるのか,ドキュメンタリーの構成の巧みさがなせる業なのか――。おそらくは,その両方なのだろう。それにしても,あれから50年近くの歳月が流れている。「山の分校の記録」を越える放送教育実践が生まれ,その記録番組が制作されることを期待したい。
2006.06.04
学校研究推進に関するQ&A(LTプロジェクトの中間成果)
学校研究推進リーダー養成プロジェクト(LTプロジェクト)は2年間に及ぶ,教員研修プロジェクトである。その初年度の成果として,「学校研究推進に関するQ&A」を作成し,同プロジェクトのWebページにアップした。
ここには,学校における実践研究=学校研究の企画・運営に関わる,次の4つの大項目,それに基づく80あまりのQ&Aが提供されている。
1.研究計画の作成
2.研究テーマの設定
3.授業研究の企画・運営
4.研究紀要の作成
このQ&Aは,学校研究の計画・実施・評価のツボが整理されている。学校研究の企画・運営に悩む方が参考にできるアイデアがたくさん載っている。 研究主任等の立場にある方には,自己点検・評価の道具として,利用してもらえるに違いない。
アクセスして,感想を述べていただければ幸甚である。
2006.06.03
研究授業の企画・運営-その数をどう増やすか-
30日に訪問した,京都市立仁和小学校では,今年度,研究発表会でのものも含め,15の研究授業が予定されている。要するに,全学級で研究授業が実施されるのだ。全員が参加するもの,学年や部会を単位とするものなど,確認していないが,おそらく,そのスタイルには多様性があろう。いずれにしても,立派な数だ。
一方で,私が関わっている学校でも,年に1度だけしか実施しないところもあるし,聞くところによると,1年に1度も実施しない学校もあるようだ。
数が多ければよいというものではないが,やはり,それは,学校の実践研究の成熟度を物語る指標であろう。私が推進している,学校研究推進リーダー養成プロジェクト(LTプロジェクト)では,学校研究推進のためのQ&A集を作成した(近日中に公開の予定)。そして,その項目の1つに,「Q2:なかなか研究授業の実施を引き受ける人がいません。どうすれば,進んで引き受ける人が増えるでしょうか。」を用意してみた。読者ならば,この問いにどのように回答するだろうか。次のような対応がモデルとなるだろう。
2006.06.02
「指導主事力」が発揮された教員研修
1日,北九州市立教育センターの教員研修に協力してきた。研究主任や教務主任等を対象とする,学校研究の意義や手続きに関して,話題提供をしてきた。
85分の講義時間を頂戴していたが,15分くらい超過してしまい,大反省している。最初にやった演習的活動に時間を割きすぎた――。
それにしても,この研修は,その運営がよく練られていて,協力のしがいがあった。というのも,私の講義の後,5・6人のグループに分かれて,私が話した内容を踏まえて,参加者が意見交換するタイムが設けられていたからだ。そして,その時間帯の司会・進行役を指導主事たちが果たしていたからだ。彼らは,タイムキーパーではなかった。論点を絞ったり,意見交換を促す指名をしたりして,参加者のコミュニケーションを活性化するための働きかけを試みていた。だからこそ,私も,その意見交換タイムに,インフォーマルに,即時的に介入したりもした。講師任せの研修が多い中,講師と指導主事のリレー,協力がきちんとデザインされた研修プログラムだった。
センターに設けられた,「実践サポート室」もいい。教師たちが自由に来室し,指導案や著書や教材を調べていくらしい。
聞くところによると,同市では,毎週水曜日の午後が研修日に位置づけられるようだ。そこで研究テーマに基づく研修等が,定期的に運営される。そうした研究文化が豊かな地域の教育センターで,「指導主事力」が十分に発揮されているのだから,研修が充実するはずだ。
2006.06.01
全放連・学力向上プロジェクト2年度目の研究授業
全放連の研究活動,「放送学習による学力向上プロジェクト」の2年度目がスタートしている。今年度は,松下教育研究財団の実践研究助成も受けているので,いっそう研究活動を充実させる必要がある。今日は,本年度2回目の研究会が渋谷のNHKで催された。 今年度も,メンバーそれぞれが,学力向上と学校放送番組利用との接点を追究する。と同時に,2回の研究授業が企画・運営される。1学期は,7月19日(水,2学期制のため26日が終業式)に,川崎市立夢見ヶ崎小学校4年生担任の草柳さんが,『ふしぎ大調査』を活用して,星の観察に関する意欲や技能を高める授業を展開する。
実は,これまでにも,全放連の研究プロジェクトでは,理科の学力向上に資する授業を設計・実施・評価してきている。それらのコンセプトやデザインをどう乗り越えるかが,草柳さんの大きな課題だ。しかし,放送教育指導者養成講座(通称:虎の穴)の「優秀な」卒業生たる,彼のことだ。この難題も克服してくれるに違いない。
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