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2011.01.13

『学級力が育つワークショップ学習のすすめ』(田中博之著,金子書房)

 金子書房の月刊誌『児童心理』の2月号に,私が執筆した書評が載った。対象となった書籍は,『学級力が育つワークショップ学習のすすめ-明日の授業からすぐに使える5つのメソッド』(田中博之著,金子書房)である。
 短い文章で,当該書籍の特徴や独自性,魅力をまとめるのは,難しい。次のような文章で,彼の図書への読者の関心を高められたであろうか--。

 本書で著者は,小中学校における学習にワークショップを導入することの意義を説くとともに,その視点と方法を,豊富な実践事例を交えて紹介している。本書は,ワークショップを基盤とする学習(以下,ワークショップ学習)を実施しようとする教師,充実させようとする教師にとっては,その「ハンドブック」とも言える存在であり,とても有用だ。
 本書の内容は,理論編(Chapter1及び2)と実践編(Chapter3~7)に分かれる。理論編では,ワークショップ学習の今日的意義が,社会的スキルや人間関係力の育成という視点から確認されるとともに,その先達たるフィンランドの教育の様子を参照しながら,説かれる。また,それらの能力・資質によって構成される「学級力」の概念が解説されるとともに,その全国的な実態がレポートされる。さらに,ワークショップの原理やタイプ,基本的な特徴(融合性・触発性・実践性・工夫性・発展性)等が整理され,ワークショップ学習で培うことができる能力が構造的に示される。加えて,ワークショップ学習と新学習指導要領において強調されている「活用」型学習の実施や言語活動の充実等との接点が分かりやすく説明されている。
 実践編の5つの章では,学級力を育てるためのメソッドが詳しく紹介される。それらは,「カルタ」「評価セッション」「成長発表会」「サークルタイム」「ドラマ」である。これらの章では,まず,各メソッドの「学級力」に対する教育効果やそれを実施する際のポイントが明らかにされる。次いで,その実践事例が,写真(教師や子どもの姿,ワークシートや作品の実例等)を伴って,詳しく紹介される。それぞれが,読み応えのあるストーリーだ。その上,それらは,地域,教科・領域,学年といった点において多様性に富んでいるため,読者は,ワークショップ学習のイメージを膨らませやすい。
 以上のような内容・構成から,本書を手にする教師や保護者は,本書の内容に触れて,現代の子どもと学校にとって,ワークショップ学習がいかに必然性のある学習方法であるかを実感できよう。同時に,それを「体系的に」理解できよう。
 さらに,厚みのある事例や,「学級力アンケートシート」のようなすぐに活用できるツールに出会って,教師たちは,ワークショップ学習を教室に導入する際の手がかりをたくさん獲得できよう。
 著者は,長年にわたって教育現場に接近し,実践的なアイデアを蓄えてきた。本書は,そうした著者だからこそ上梓できた,好著である。

 

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