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2011.04.04

木原俊行著『活用型学力を育てる授業づくり-思考・判断・表現力を高めるための指導と評価の工夫』(ミネルヴァ書房,2011年)

P1240728 拙著『活用型学力を育てる授業づくり-思考・判断・表現力を高めるための指導と評価の工夫』(ミネルヴァ書房,2011年)が刊行の運びとなった。単著の3冊目である。以下のような9章で構成されている。

はじめに 活用型学力の今日的意義
第1章 活用型学力の特徴・構造とそれを育む授業のデザイン
第2章 活用型学力の育成に向けた学習参加の促進
第3章 活用型学力の育成を促し,支える教材の開発
第4章 活用型学力を高める体験的な学習
第5章 活用型学力を充実させるICT活用
第6章 活用型学力を磨くプロジェクト的な学習
第7章 活用型学力のいっそうの充実を図る学校カリキュラム
第8章 活用型学力を育てる教師たちの学び-校内研修の工夫改善-
第9章 学校を基盤とする学力向上アプローチを通じた活用型学力の育成
おわりに

 思考・判断・表現力の育成について,包括的に論じているのが特徴だ。「おわりに」の文章を載せておこう。

おわりに

 今日,教師たちをめぐる状況は,少なくともかつてに比べて,厳しい。家庭や地域の教育力の低下への対応,学校内外の子どもの安全確保,保護者のクレームへの対応等,新たな課題が次々と登場し,それらは,彼らを疲弊させている。
 そのような状況下に置かれている教師たちにとって,「思考力・判断力・表現力の育成を図りましょう」という課題を投げかけられるのは,それが授業づくりの工夫を伴うものであるゆえ,ある意味,酷なリクエストであろう。実際,一部の教師たちは,多忙化や脆弱な学習環境(ICT環境が十分に整備されていない等)を理由に,それらの能力を育むための活用型授業に背を向けている。
確かに,これまで述べてきたように,活用型学力の育成を図る営みでは,教師たちは,教科書や指導書に依存した授業に終始するわけにはいかない。その準備に相当の時間とエネルギーを費やさざるをえない。加えて,教科指導の一環である以上,学習指導要領の枠組みを踏まえねばならないし,ひとつの学習内容に投入できる時間は限られている。つまり,活用型授業への取り組みは,例えば総合的な学習の時間の授業づくりに比べて,制約が多い。
 けれども今日,教職を含む専門職は,はっきりとした解のない,障害の多い問題に遭遇し,それを反省的思考によって克服すべきであり,それを通じて,専門家として成長できる,それらがその職業的特色であると考えられている。活用型学力の育成に励む教師たちの姿は,そうした「反省的実践家」としての教師像を示すものだ。実際,筆者のまわりで,子どもたちのために,思考力等の育成にチャレンジしている教師たちは,その実践を蓄積して活用型授業のデザインを精錬させる中で,授業づくりのレパートリーを増やし,専門家としての成長を遂げている。
さらに,いくつかの学校の教師たちは,校内研修の企画・運営を工夫して,活用型授業の成立と充実に資するアイデアを学校内で環流させ,共有化して,学校全体の授業力のアップを図っている。それは,いわゆる,専門的な学習共同体(Professional Learning Communities)の好例であろう。換言すれば,活用型学力の育成に全員で取り組む学校は,今教育現場に求められる学校のあり方を象徴するものなのだ。

 筆者は,こうした思いに根ざして,活用型学力の育成に真摯な姿勢で向かう教師たちに対して,エールを送るために本書を著した。彼らの取り組みの意義を説き,手がかりとなるモデルを呈し,そして具体的な事例を紹介した。本書が活用型授業の成立と充実に取り組む教師たちの成長,彼らが属する学校の発展に少しでも貢献できたならば,幸甚である。

 本書の内容は,ここ数年間の筆者と学校現場の関わりの中から培われた経験知に依るところが大である。筆者にそのような機会を提供してくれた,数多くの教師たちに,衷心より御礼申し上げる。
 また,そうした経験を体系的にまとめるようアドバイスしてくださった学兄の田中博之氏(早稲田大学)に,改めて御礼申し上げたい。本書の一部は,田中氏をリーダーとする,学力調査等に関する研究プロジェクトの活動の中で蓄積されたものである。筆者にそのような舞台を提供してくださった,ベネッセ教育研究開発センターにも,感謝の意を表したい。
 なにより,学校現場との関わりに時間を割かれ,原稿執筆が遅れた筆者を暖かく見守り励ましてくださったミネルヴァ書房の西吉誠氏及び川松いずみ氏には,感謝の気持ちでいっぱいである。

なお,筆者は,活用型学力の育成を含む,学校における実践研究の様子を自らのブログにてレポートしている。「授業研究と教師の成長-木原俊行の研究・教育に関するデジタルポートフォリオ」(http://toshiyukikihara.cocolog-nifty.com/puppy/)である。アクセスしていただければ,本書の内容に関係する最新情報やさらなる事例等を入手していただけるのではないかと考える。

平成23年2月吉日,今年接点のあった学校や教師たちを思い出しながら。

木原俊行

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