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2016.03.14

『教育工学的なアプローチによる教師教育』(ミネルヴァ書房 教育工学選書Ⅱ 10)

 本日,ミネルヴァ書房より,『教育工学的なアプローチによる教師教育』が届いた。これは,私と寺嶋先生(大阪教育大学),島田先生(高知大学)が編者となって,教育工学的なアプローチに基づく教師教育に関する論文を収めた学術書である。日本教育工学会が監修している選書の1つだ。私は,「はじめに」「第1章」を執筆している。「はじめに」に記した,本書の概要を掲げておこう。

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 本書は,教育工学的なアプローチに基づいて教師教育の実践的課題の解決に従事しているメンバーが執筆者となっている。本書で,執筆メンバーは,自身が教育工学と教師教育の接点を追究した過程を語っている。そして,自身の研究の特徴を示すとともに,それによる知見を呈している。
 本書における語りや知見の内容は,大きく5つのパートに分かれる。まず第1章では,教育工学的アプローチに基づく教師教育の研究と実践を俯瞰する枠組み(変化する社会における教師像の5つの要素,今日の教師教育研究と教育工学研究の接点を成す5つの具体的なアプローチ)が呈される。それは,本書の内容の総論に該当する。
 続く2つの章では,教育工学的アプローチに基づく教師教育の営みの重要な概念が提示される。第2章では,世界の教師教育の動向が解説されるとともに,諸外国や我が国における教師の力量に関するスタンダード構築の軌跡が描かれ,また,その現状が整理される。第3章では,レジリエンス等の教師の力量とその形成をめぐる今日的課題が提示され,その克服に資する理論たる「専門的な学習共同体」の特性が解説される。そして,それに合致した実践事例が紹介される。
 第4章から第7章では,教員養成や現職教育のカリキュラム開発が報告される。まず,第4章では,教員養成カリキュラムの柱とも言える,教育実習に関して,その長期化・体系化・高度化の取組事例がレポートされる。第5章では,「教育の情報化」に応ずるための教員養成カリキュラムの改革がテーマとなっている。その問題点が整理された後,その基本的な考え方や好事例が示される。第6章は,現職教員を対象とした大学院教育の高度化に関する言及である。教職大学院の制度上の特色,そのカリキュラムの目標や内容,その指導法の特徴が整理される。また,教職大学院の科目の典型事例,そのシラバス等が提示される。第7章は,現職教員に対する行政研修プログラムの改革動向の解説である。反省的実践家たる現職教員の学びを支える法制度とその現状に関する概説の後,行政研修プログラムの改編の内容とその代表事例が呈される。
 第8章から第10章では,教師教育の実践を支え促すシステムやツール等の開発の知見が報告される。第8章が取り上げるのは,模擬授業教室である。本章では,かつて教育工学的アプローチの象徴的存在であったマイクロティーチングが模擬授業教室のデザインの工夫によって充実すること,その多様な活用可能性,運用上の留意点等が述べられている。第9章では,オンライン授業研究のためのシステム開発に関する研究知見が提示される。一般の授業研究の企画・運営に伴う空間的・時間的制約を超克するためのシステムの開発,それを基盤とするプログラムの運用を通じて,それに参加した教師たちのリフレクションの活性化や充実が実現したことが語られている。第10章では,現職教員のためのeLearningプログラムに関して,その概念や原理,その特徴が整理された後,それを基盤とする大学院教育や教員研修の事例が報告される。著者らが「のびちぢみする講義室」として設計し運用した,現職教員向け遠隔学習の実際,成果と課題が呈される。
 本書の最後には,「資料 教師教育に関係する学会や協議会等の動き」のパートが位置づく。ここでは,教師教育に関係する国内外の学会の研究動向が明らかにされている。また,教師教育に関わる協会や協議会の存在や取り組み状況が紹介されている。それらは,読者が,自身の教育工学的なアプローチによる教師教育研究を相対化するためにも,あるいは発展させるためにも活用できる,教師教育研究のコミュニティである。
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